おくりものと「熨斗」。
2023.10.01|そうめんエンタメ
おくりもの。
お歳暮、お中元、ご挨拶、御祝い、、、贈り物を選ぶタイミングは数あれど、おそうめんをお求めくださるお客様が一番多くなるのは、「お中元」の季節です。
夏の暑い季節、長い時間火を使わなくてもお召し上がりいただけること。冷やしたおそうめんがするっと食べやすいこと。また贈答品として差し上げるのに日持ちがすることから、「毎年お中元はそうめんに決めてるの。」とお選びいただくお客様が多いのですが、それ以外にもそうめんの麺が細く長いことから、普段お会いすることが出来ない方に、細く長くお付き合いをお願いする意味が込められているとされています。
そんなお中元をはじめとした、日本の贈り物にかかせない風習が「のし」です。「贈り物にのしを付ける」ということは知っていても、詳しくは知らない方も多いのではないでしょうか?
今回は「のし(熨斗)」について書きたいと思います。
熨斗(のし)ってなに?
近年、一般的には「のし紙」全体を指して「のし」と呼ばれることが多いですが、本来、熨斗(のし)は右上にある六角形の飾りのことを指しています。
熨斗の中に入っている黄色く細長いものは「のし鮑(あわび)」と言い、元来は鮑をのして(薄く切って伸ばして)乾燥させたものでした。
「日本書紀」によると、天照大神(あまてらすおおみかみ)の命により伊勢に出向いていた倭姫命(やまとひめのみこと)が国崎(くざき)という場所で海女から差し出された鮑の美味しさに感動し、伊勢神宮に献上してほしいと頼んだところ、生では腐るので薄く切って乾かし、神饌として供えられたことがのし鮑の始まりとされています。
以後2000年以上、現在になっても国崎町ではのし鮑が作られ、毎年三節祭の折に伊勢神宮に献上されています。
この「のし鮑」が江戸時代に入ると、鮑は栄養価が高く、古代中国では不老不死の薬としても信じられてきたことから、長寿をもたらす縁起物として贈答品に添えて渡されるようになりました。
白い和紙に赤く染めた和紙を重ね合わせ、束ねたのし鮑を包んで水引で止め結んだものが、 その後時間をかけて「折熨斗」へと変化していき、現在は祝儀袋に使われています。
縁起物であり、本来生臭物である鮑が由来ですから、仏様にお供えする弔事用の掛け紙には「熨斗」がついていないんですね。
また、熨斗をつけることで「生ものをおくります」という意味合いにもなるため、肉や魚、鰹節などの生ものには熨斗をつけず、弔事用と同じく掛け紙に水引のみ掛けるのが正式になります。
水引きの始まり。
古来より、神様へのお供物は農作物を和紙を巻き、紙縒り(こより)で束ねて供えていました。
飛鳥時代に、隋(現在の中国)に渡った遣隋使、小野妹子が帰朝の際、献上品に「くれない」という、麻を紅白で染め分けをしたひも状のものを結んで日本へ持ち帰った。といわれています。
これは帰路の平穏無事を祈願すると共に、贈り物が真心のこもった品物である事を表わしたと言われています。
室町時代に入ると、日明貿易(にちみんぼうえき)で明国(みんこく)からの貿易品に、輸出品と輸入品を見分ける方法として、白と赤の縄が結び付けられていました。
その後、宮中への献上品に紅白の紐を結びつけるようになり、庶民の間でも広がっていったことが水引の始まりとされています。
また、水引という名前の語源には諸説ありますが、紙縒りが元に戻らないように糊水を引いて乾かし固めたことから。と言われています。
のし紙のマナー
のし紙には種類がいくつかありますが、どんな時にどんなのし紙を使えばいいのか、ご存じない方も多いですよね。店頭でもよくお客様からご質問いただきます。
のし紙に印刷された水引には大きく分けて2種類あります。「蝶結び(花結び)」と「結び切り」です。
結びなおせる蝶結びは、何回起こってもよいお祝いや贈り物に使います。例えば、お中元やお歳暮の季節のあいさつ、長寿のお祝い、出産祝いなどです。
「結び切り」の水引は何度も繰り返すことを望まない、結婚や御見舞い、お悔やみの贈り物に使います。
慶事(よろこびごと)の際使用する水引は紅白を、弔事(お悔みごと)の際使用する水引は黒白、関西や北陸地方では黄白の水引を使用することが多いです。(勇製麺では黄色の水引でご用意しております。)基本の水引は5本のものを使用しますが、結婚や結納では、お祝いを送る場合もお返しの内祝いも、10本のものを使用します。
弔事の場合、宗教や宗派によって利用するのし紙が基本とは異なることがあります。ご家族やご親戚に確認することをおすすめいたします。
のし紙をかける際、水引の上部分に「表書き」、下部分に「名入れ」贈り主の名前を入れます。
「表書き」は、かつて贈り物に添えられていた目録に由来しています。この目録には、品物の内容と数量、送り主の名前を書いていました。時代が進むにつれ、贈り物の目的と送り主の名前をのし紙に書くようになりました。
個人(1人)で贈る場合は水引の真下に名前を入れます。表書きの文字より名前の字を小さくするのがマナーです。
夫婦の名前でお中元を贈る場合は、まず水引の真下に夫の名前を姓・名ともに入れます。妻の名前は夫の名前の左側に、名前のみ入れましょう。
連名で名前を書く場合は3人まで。
役職や地位の順に右から書き入れます。同列の場合は五十音順に。
4人以上の場合は代表者の名前のみを書き、左側に「他一同」「有志一同」と書くのが一般的です。
内のし、外のしって?
〇内のし
お品に直接のし紙をかけ、その上から包装紙で包む方法です。“贈る”ということを控えめに表現したい内祝いなどでは、内のしが適しているとされています。ちなみに、現在では内祝いを「お返し」と捉えることが多いのですが、もともとは「自分に祝い事があったのでお裾分けします」という目的で贈られる贈り物のことを言います。また、お品を郵送する場合には、のし紙に汚れや傷が付かないよう、内のしをおすすめします。
〇外のし
婚礼関係や法事のお供えなどで、受取をされる方に贈り物が集中することが予想される場合、誰から来たものかすぐにわかるように、外のしにするのがいいとされます。また、お品を直接お渡しする際には、贈る目的が伝わるよう、外のしを選ばれることが多いようです。
いかがでしょうか?少しは贈り物の際のお役にたてたでしょうか?
最近ではSDGSの観点からも、簡易包装やカジュアルな包装での贈り物もかなり増え、のし無しでご用意させていただくことも多くなってまいりましたが、知識として基本のマナー、知っているに越したことはないですよね!
今回こちらの記事を書くにあたって、のし紙の歴史や由来に触れてみて、思いのほかとてもおもしろかったです。「マナー」「常識」とされていることにも理由があって、それを知らずに何気なく行うのと知識を得たうえで理解して行うのとでは、なんだか気分が違ってくる気がします。
御中元の季節は終わり、次は御歳暮のシーズンを迎えます。勇製麺では夏だけでなく冬も魅力的なあったかい麺をご用意してお待ちしていますね♪